周藤の過去 ~実話~



  彼には友達がいなかった。

 いや正確にいうと、彼に近づくことができなかったからだ。

 さくらが満開になり桃色の花びらが、牛にたかるハエのように舞う季節、

 僕らはこの小学校に入学した。


  僕をはじめ普通の子は母親と一緒に真新しいランドセルをしょい、

 にこにこ顔ではしゃいでいる。しかし彼こと「周藤金太」は

 半袖のランニングシャツにB'zの稲葉の短パンという、

 良くいえば"すごい"、悪くいえば"何っ?"って感じである。

 つまり一人だけ違った存在だった。


  周藤の手には1万円札が2枚と、"くしゃくしゃの紙切れ"を持っていた。

 僕は好奇心が先走り、周藤からその"紙切れ"を奪い取った。

 少しだけ目がキツくなり、僕を見ていた。

 ぼくはそんな事も気にせず、すぐさま"紙切れ"を広げた。


  僕は一瞬後悔した。そこには"離婚届"としっかり書かれていた。

 と次の瞬間、校門の方で女の人の悲鳴と同時に車のブレーキ音が聞こえた。

 ・・・皆が注目した。そして周藤が走っていた。どうやら周藤の母親だったらしい。

 そして母親は倒れながら最後の言葉で喋った。


  母「金太、今年の有馬記念は6のタイキブリザードで流して、

    そして紅白の司会はね……う。」


 周藤は何も言わず目に涙をためて、しっかり遺言をを受けとめた。

 周藤はとんだ入学式を迎えてしまった・・・

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